1.成年後見制度とは
判断能力の不十分な方々の権利を擁護するための制度です。具体的には、主に認知症高齢者・知的障がい者・精神障がい者の方々が普通の生活を送ることができるように、家庭裁判所が申立により支援者(後見人等)を選任し、その支援者が本人のために銀行での預金口座の開設やお金の借入れの申込み等の財産管理や介護サービス契約締結等の身上監護をおこないます。
2.成年後見制度の理念
成年後見制度は平成12年から施行され、以下の4つの基本理念から成り立っています。
(1)自己決定の尊重
成年後見人等は本人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務について本人の意思・希望を尊重しておこないます。(2)身上配慮義務
成年後見人等は本人の心身の状況及び生活状況に配慮しなければなりません。例えば、住居の確保や介護保険の給付付きをはじめとする各種介護・福祉サービスの供給契約、施設入所契約、医療契約等があげられます。(3)残存能力の活用
高齢者等が自分らしく老後を送るために、自分の能力を活用することが必要であるという考え方のことです。(4)ノーマライゼーション
高齢者や障がい者などが、その地域で他の人々と同じように普通に生活できることが当然であるという考え方のことです。成年後見制度はこれらの理念のもとに、本人が社会でも家庭でも自らの選択した生活が送れるように支援するための制度です。
3.成年後見制度の種類
種 類
成年後見制度には2つの種類があります。一つはすでに判断能力が低下してしまった方を支援する法定後見制度。もう一つは、今現在は判断ができている方が将来判断能力が低下した時のために、公正証書で自己の決めた後見人と後見契約を締結し実際に、本人の判断能力が低下してしまった時に契約を結んだ後見人が本人を支援する任意後見制度です。詳細は下のリンクをクリックしてください。
違 い
簡単ですが、違いを表にしてみました。利用できる方 | 判断能力が欠けている(後見)判断能力が著しく不十分(保佐)判断能力が不十分(補助) とされた方 | 判断能力がある方、または不十分(補助)の方 |
後見人の選任 | 家庭裁判所 | 本人が決めます |
後見人監督 | 家庭裁判所 | 任意後見監督人 |
後見開始 | 後見開始の審判等の確定後 | 任意後見監督人選任審判確定後 |
仕事内容 | 後見人の仕事は補助・保佐・後見の類型に応じて異なります | 契約で定めた内容が仕事内容となります |
取消権 | 法律行為の取消権をもっています | 法律行為の取消権はありません |
報酬 | 家庭裁判所が定めます | 任意後見人との契約で決まります |
報告 | 裁判所への報告はおおむね1年ごとになります | 契約で定めた時期(一般的には3ヶ月から6ヶ月に1回)に任意後見監督人に事務報告をします |
4.成年後見登記制度とは
平成12年3月31日まで、戸籍には禁治産・準禁治産の宣告に関する記載がされていました。しかし平成12年4月1日から、禁治産・準禁治産制度の代わりに成年後見制度が新しく創設され、それに伴い従来の戸籍への記載はなくなりましたし、禁治産・準禁治産という名称も後見・保佐・補助に変わりました。
後見人等が選任されると、東京法務局で成年後見登記がされます。成年後見登記(法定後見の開始・任意後見監督人選任・任意後見契約)は家庭裁判所の書記官や公証人の嘱託により、後見登記等ファイルに記録(登記)されます。そして、登記が完了すると、本人及びその親族や後見人といった限定された方だけが登記事項証明書の発行を請求できます。これは、プライバシー保護のために登記事項証明書の取得者を限定しています。また、後見登記事項に変更があった場合(例:被後見人の住所が変更した)後見が終了した場合は後見人、被後見人・親族等が変更・終了登記の申請を東京法務局にしなければなりません。
◎登記事項証明書が必要になる場合の例
- ・被後見人の不動産を売却、購入する時
- ・金融機関と取引をするとき
- ・老人施設等の入所契約や介護サービスの利用契約等を締結するとき
- ・訴訟や調停を行うとき
上記のような場合に後見人等が相手方に対し取引等をおこなう権限があることを証明するために必要となります。
成年後見登記制度をさらに詳しく知りたい場合東京法務局のホームページを参照ください。
http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/static/i_seinen.html