1.内 容
民法の定める後見制度のことで、本人の判断能力が衰えてしまい日常生活に支障をきたす場面がある際に、民法で定められた人(申立人)が家庭裁判所に申立てをして家庭裁判所が、認めれば判断能力の程度に応じて本人を支援する人(後見人・保佐人・補助人)が選任されます。そして、支援者は本人の希望をくみ取りながら、本人のために財産管理や身上監護等のサポートをします。
2.法定後見人の欠格事由
下記の方は後見人になれません。
1. | 未成年者 |
2. | 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人 |
3. | 破産者 |
4. | 被後見人に対して訴訟をし、またはした者並びにその配偶者及び直系血族 |
5. | 行方の知れない者 |
3.資格制限について
下記の事案においては申立てをすると本人が不利益を生じる事柄です。
(注)被補助人・任意後見契約における本人には資格制限がありません。
1. | 選挙権・被選挙権の喪失…成年被後見人のみ |
2. | 公務員等の就業資格の喪失…成年被後見人及び被保佐人 |
3. | 専門資格の喪失…成年被後見人及び被保佐人 |
例)弁護士・医師・司法書士・行政書士・公認会計士・税理士・歯科技師・薬剤師・建築士・社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士等 | |
4. | 営業資格の喪失…成年被後見人・被保佐人 |
例)風俗営業・古物営業・警備業・一般労働者派遣業・投資顧問業・薬局・旅行業等 | |
5. | 印鑑登録を受けることができない…成年被後見人のみ |
4.法定後見の種類
本人の判断能力の程度に応じて以下の3つの類型に分かれています。
家庭裁判所がこの類型に該当すると判断し補助開始の審判をすると被補助人(補助を受ける人)のために補助人(補助をする人)が付けられます。補助開始の申立ては代理権又は同意権付与の申立て(代理権・同意権の双方付与でもよい)と共にしなければなりません。そしてこれらの申立てについては本人の同意が必要です。補助人は裁判所が認めた事項について契約を取消す権限、補助を受ける人に代わって契約を行う権限が与えられます。
☆補助制度は、どのような法律行為について同意権または代理権を与えるのか本人に選択を委ねています。すなわち、成年後見制度の理念である自己決定権を広く保障している制度といえます。
(1)後 見 |
(2)保 佐 |
(3)補 助 |
(1)後 見
判断がまったくできない、あるいはほとんどできない方を対象にしています。認知症・知的障がい・精神障がい等で自己の財産を管理・処分することができない状態で、日常的な買い物等も自分ではできず誰かに代わってもらう必要があるという常況です。家庭裁判所がこの類型に該当すると判断し、後見開始の審判をすると成年被後見人(後見を受ける人)のために成年後見人(後見をする人)が付けられ後見がスタートします。成年後見人は被後見人の財産に関する法律行為を代わって行うことができます。また日常生活に関する行為を除いた法律行為を取消すこともできます。(例) | ||
・老人ホーム等への入所契約 | ||
・不動産の売却 | ||
・不利益な契約の取消 |
一 | 貸金の元本の返済を受けること |
二 | 金銭を借り入れたり、保証人になること |
三 | 不動産をはじめとする重要な財産について、手に入れたり、手放したり |
すること | |
四 | 民事訴訟で原告となる訴訟行為をすること |
五 | 贈与すること、和解・仲裁契約をすること |
六 | 相続の承認・放棄をしたり、遺産分割をすること |
七 | 贈与・遺贈を拒絶したり、不利な条件がついた贈与や遺贈を受けること |
八 | 新築・改築・増築や大修繕をすること |
九 | 一定の期間を超える賃貸借契約をすること |
(3)補 助
判断能力が不十分である方を対象にしています。軽度の精神的障がい・知的障がい、初期の認知症等で、大体のことは独りでできますが重要な財産行為は、できるかどうか危惧があるので本人の利益のためには誰かに代わってやってもらった方が良いという常況です。家庭裁判所がこの類型に該当すると判断し補助開始の審判をすると被補助人(補助を受ける人)のために補助人(補助をする人)が付けられます。補助開始の申立ては代理権又は同意権付与の申立て(代理権・同意権の双方付与でもよい)と共にしなければなりません。そしてこれらの申立てについては本人の同意が必要です。補助人は裁判所が認めた事項について契約を取消す権限、補助を受ける人に代わって契約を行う権限が与えられます。
☆補助制度は、どのような法律行為について同意権または代理権を与えるのか本人に選択を委ねています。すなわち、成年後見制度の理念である自己決定権を広く保障している制度といえます。
5.後見人・保佐人・補助人の職務
後見人・保佐人・補助人の職務には以下の3項目があります。
(1)財産管理 |
(2)身上監護 |
(3)後見等の終了についての事務 |
(1)財産管理
成年後見人等が本人を代理して(保佐・補助類型の場合は本人の同意が必要な場合があります)、契約の締結・解除や費用の支払いをしたり、預貯金・不動産の管理等をおこないます。また、本人の財産や収支の状況を調査し、一定の時期に家庭裁判所へ財産目録等を作成して提出しなければなりません。(2)身上監護
成年後見人等が本人に必要な介護サービスの契約、施設入所契約を本人に代わって締結したり、入院や通院が必要な場合に医療契約の締結をしたり、要介護認定の申請などを行います。(3)後見等の終了についての事務
成年被後見人等が亡くなる等で後見事務が終了する時には、成年後見人等は家庭裁判所に財産目録等を作成して提出します。また、成年後見人等は相続人またはその代理人に対し、成年被後見人等の財産を引き渡します。6.法定後見制度の手続きの流れ
お電話または、メールでの受付の際にご相談日時を調整させていただきます。 連絡先詳細はこちら | ||
面談予定日に本人、ご家族、本人をサポートしている方等にお会いして事情聴取します。この時ご不明な点についてのご説明をいたします。 (相談のみの場合はこの時点で終了いたします) | ||
面談後に司法書士に申し立て書類作成や後見業務の依頼があれば、後見・保佐・補助のどの申立てにすべきか方針を決定し、申立に必要な書類をご案内します。並行して医師の診断依頼をお願いします。 | ||
申立書等の書類作成をします。司法書士に依頼している場合、ご本人やご家族の事情説明書の記入のため、再度お話を伺います。 | ||
申立書・添付書類を家庭裁判所に提出します。 (予納金も納付します) ※司法書士に依頼している場合、司法書士が同行します。 | ||
申立人・成年後見人候補者の面接をします。 (東京家庭裁判所は申立書提出と同時に面接します) | ||
調査官の調査及び精神鑑定の依頼がなされます。 (補助の場合、鑑定はありません) ※司法書士に依頼している場合は、調査官の調査に同席します。 | ||
申立人・成年後見人に対し書記官から審判書が送達されます。 審判書を一番最後に受領した人の受領日から2週間以内に異議の申し立てがない場合、審判が確定します。 | ||
後見登記等ファイルに記録されます。後見人となった方は新たに後見業務スタート。 申立てから審判までの期間について、鑑定の必要な後見・保佐で約3ヶ月程度、鑑定不要な補助で約1ヶ月程度かかりますが、鑑定が困難なケースや事案が複雑なケースの場合は3ヶ月以上かかります。 | ||
成年後見人等は家庭裁判所に初回の財産目録・収支状況報告書を提出します。 なお、この報告は1年に1度を目安に定期的に家庭裁判所に提出します。 | ||
成年後見人等の報酬は家庭裁判所に報酬付与の申立てをして、家庭裁判所の裁量で報酬を決定します。原則、年1回の支払いで、申立てをしないかぎり無報酬です。 | ||
本人が亡くなられるなどして後見業務が終了した場合は、報酬付与の審判を受けてから家庭裁判所へ後見業務が終了した報告書を財産目録とともに提出し、相続人やその代理人に対し財産の引き渡しを行い、すべての後見業務を終了します。 |
7.法定後見の申立必要書類
1.申立人についての書類(候補者と同一なら下記書類は不要) | |
・戸籍謄本 ・・・ 1通 作成後3ヶ月以内のもの | |
2.本人についての書類 | |
・戸籍謄本 (推定相続人が判明するまでの戸籍)作成後3ヶ月以内のもの | |
・住民票 ・・・ 1通 | |
・後見登記のないことの証明書 1通 | |
・医師の診断書(家庭裁判所に定まった書式あり) ・・・ 1通 | |
3.成年後見人等候補者についての書類 | |
・戸籍謄本 ・・・ 1通 作成後3ヶ月以内のもの | |
・住民票(世帯全部のもの) ・・・ 1通 | |
4.申立書類(家庭裁判所の書式があります) | |
・申立書 | |
・申立事情説明書 | |
・本人の財産目録及び収支状況報告書 | |
・後見人等候補者事情説明書 | |
・親族関係説明図 | |
*司法書士に書類作成の依頼をしている場合、申立書類の作成をいたします。 | |
5.その他 | |
その他の書類は事案によって異なりますので、面談で必要書類を提示させていただきます。 (例:不動産登記事項証明書・愛の手帳など) |